喜ばざる状況だから修理後には喜んで頂きたい。
繊細な感覚とテクニックでスペシャリストが対応します。
実際の修理の事例です。
平成15年式 三菱 ランサーエボリューションⅧ(CT9A)
ボディーカラー:パルマレッド(P85/ソリッド)
高速道路での追突事故による損傷です。
追突した相手はトラックで、トラックの荷台の下に潜り込みトラックの追突防止装置にフロントガラスがぶつかって止まったとの事。
幸いにしてお客様にはケガはありませんでした。
これだけ大きな事故にもかかわらずお客様に怪我が無かった事はこのおクルマがドライバーを守ってくれたのでしょうね 😀
ボンネットを突き破りカウルトップパネル、ダッシュパネルにまで変形が及んでいます。
(こんなこと言っていいか分かりませんが)
事故を起こして数日後、お客様が損傷を負った愛車を見に来た日は雨が降っていました。
愛車の変わり果てた姿を見た時にショックを受け、雨の中、傘もささずに立ち尽くしていたのが印象に残っています。
こちらのおクルマはやっとの思いで探した思い入れのあるクルマとの事。
一見の損傷の大きさから直す事は出来ないと諦めていたようです。
当社も自動車の修理修理工場の端くれ。
どんな大きなダメージを負った自動車でもそのクルマに想い入れがあり「直したい」という希望があれば、当社が持つ技術と設備を最大限に活用してその想いに応えたいと考えるのは当然の事。
こちらのクルマが負ったダメージ具合や修理の仕方、お客様のご予算を聞き、ご納得いただき今回修理となりました。
心なしか、お客様の思い入れのあるクルマの修理は技術者達がいつもとはちょっとだけ違う気がします 😀
では、車体整備の開始です。
まずは、『BLACKHAWK』により車体のアライニング(荒出し)から。
車体を固定して、「ヘッドランプ(ラジエータ)サポート」のアライニング。
タワーバーを利用したアライニング。
トラックの荷台の下に潜り込んだ事で、幸いにして「サイドメンバー」にはほとんどダメージが及んでいなかったんです。
今回「直す事」をお勧めした大きな理由の一つです。
次に「カウルトップパネル」のアライニング。
で、一旦ここで作業ストップ・・・・
「カウルトップパネル」に打刻されている車台番号。
この番号付近を修理する時には陸運局の許可が必要なんです。
当社から30km程離れた沼津市にある「沼津自動車検査登録事務所」が車検などの手続きをする事務所となりますが、車体番号に関わる手続きは静岡市にある運輸支局まで持ち込む必要があるとの事。
当社からは静岡市の運輸支局まで軽く70kmはあります・・・
行きましたとも 😥
距離も距離だし時間も半日は掛かるので、これでもかという程、事前に必要書類を確認して出向いたものの「あっコレ足りないからダメ」みたいな軽いノリで静岡まで2往復・・・うーん・・・
カウルトップパネルに打刻されている車台番号の上に×印を打刻。
まぁ、これで、大腕振って作業の続きが始められます。
カウルトップを直接アライニングして、
カウルトップを外します。
車室内から見たところ。
車室内のインストルメントパネルやハンドルを外しています。
新しいカウルトップパネルを塗装して、
溶接により取り付け。
次にヘッドランプサポートの交換。
損傷を負ったサポートを外して、
新しいサポートを塗装。
そして、溶接により溶着。
続いて、「フェンダーシールド」上部を「フロントピラー」と繋ぐ「アッパフレームアウタエクステンション」と「アッパフレームツウフロントピラーブレース」を交換。
内板部品の交換を終えて、内板塗装です。
オリジナルに近づけるように2~3色塗装します。
側面も同じように塗装。
内板塗装を終え、「ブレーキブースター/リビルト品」「ワイパーリンク/リユース品」「インストルメントパネル」を交換。
その他、「クーラーコンデンサ/リビルト品」「ラジエータ/リビルト品」「インタークーラ/社外新品」も交換。
続いて塗装ブース『SAIMA(サイマ)』内で外板塗装。
ご予算もあり、今回はリサイクル部品を使用しています。
リユース部品の色違いのボンネットの裏吹き。
赤い色は低隠蔽性といわれる色が透けてしまう特徴のある色で、下地に一色塗装を必要とします。
ボンネットが後退した事でフロントピラーの右側にも傷が付いたのでこちらも修理。
フロントバンパー。
こちらもリユース部品。
フロントフェンダ右。
こちらもリユース品。
少し傷があったので左のフロントフェンダーも塗装。
ボンネット表面。
外板パネルを塗装しながら、メカニカル部品の交換作業を同時進行していきます。
「フロントガラス/社外品」を交換して。
最後にボンネットを突き破った時にエンジンの「ヘッドカバー」が割れていまたためこちらも交換します。
塗装工程の最後にちょっとした拘(こだわ)り。
フェンダーの取り付けボルトを「立付」が決まった後に塗装します。
修理跡を分り難くする工夫の一つです。
走行できる状態になってから再度車台番号を交付するために静岡市の運輸局へ。
無事、新たな車台番号をいただきました。
持ち帰ってから最終点検の為、試乗と四輪アライメントの測定を繰り返します。
で、完成。
パルマレッドが眩しいですね 😀
ピカピカになったおクルマを納車させていただいた日は晴天でした。
あの雨の日のお客様の悲しげな表情が、納車日には天気に負けない晴れやかな笑顔で受け取って頂けました。
自動車整備事業者冥利に尽きる瞬間を有難う御座います 😀
担当者 フロント/武本・鈑金/薬師寺・塗装/椎野・整備/山田